鼻班紹介
文責:斎藤弘亮
鼻班は、昨年度鼻班の主軸であった関根基樹先生が退職されました。現在、五島史行(平成6年・慶応大学卒)、金田将治(平成20年・福井大学卒)、斎藤弘亮(平成20年・藤田医科大学卒)、山崎有朋(平成29年・東海大学卒)と計4名で診療しています。
今年度は、アレルギー性鼻炎、特に花粉症に関しては、新型コロナウイルス感染拡大の影響による外出自粛やマスクの常用などから患者さんが激減した印象でした。引き続きスギ花粉症に対する舌下免疫療法や重症アレルギー性鼻炎患者へは抗IgE抗体製剤(オマリズマブ)も使用検討していきますので、近隣の先生方には適応患者さんがいましたらご紹介お願い申し上げます。
鼻科手術については、10月に県・病院の要請で悪性・緊急手術以外の手術が中止になりましたが、幸い数週間のみの制限だったことから、手術件数は昨年度の大幅減少から回復しています。主要スタッフが1人減りましたが、五島先生を中心に従来どおりの手術件数、医療レベルを維持できるように慢心してまいります。
また、日本鼻科学会の日本鼻科学会認定手術指導医の申請資格を得るため、2022年4月からは東京医科大学茨木医療センターの大塚康司教授(日本鼻科学会認定手術暫定指導医)に非常勤医師として来ていただくことになりました。
鼻科手術治療は、ほぼ全ての症例を内視鏡下に行っています。症例の重症度や罹患洞数により、局所麻酔下の日帰り手術(DCR)や鼻中隔経由・拡大蝶形骨洞手術、EMMM(endoscopic modified medial maxillectomy)、DALMA法(direct approach to the anterior and lateral part of the maxillary sinus with an endoscope)、なども取り入れて治療を行っています。さらに今年度は、前頭洞嚢胞や前頭洞腫瘍に対するEMLP(Endoscopic modified Lothrop procedure)や鼻腔を占拠する腫瘍に対するTACMI法(Transseptal Access with Crossing Multiple Incisions)、外鼻変形や前弯を合併した鼻中隔弯曲症に対しては、形成外科と合同でOpen Septorhinoplastyも積極的に導入しています。難治性の好酸球性副鼻腔炎例の中等・重症例に対しては、難病申請のうえ、抗IL4/13受容体抗体製剤(デュピルマブ)治療を行っています。現在、12例ほどの患者に使用中ですが、全ての患者において、嗅覚を中心とした自覚症状の改善や画像所見の改善、鼻茸の縮小効果を認めています。好酸球性中耳炎合併患者の中耳炎においては、一進一退の症例もございますが、ほぼ全ての症例でステロイド経口投与の中止または減量ができています。今後も副鼻腔炎に対する新たな生物学的製剤の適応が増加してくると思われ、当科でも積極的に取り入れていく次第です。
鼻腔通気に関連する基礎研究や副鼻腔炎患者における臨床研究も継続し、幹細胞を用いた嗅覚再生治療も検討しています。臨床と研究の両分野でさらなる発展を目指していきます。来年度もどうぞよろしくお願いいたします。
今年度は、アレルギー性鼻炎、特に花粉症に関しては、新型コロナウイルス感染拡大の影響による外出自粛やマスクの常用などから患者さんが激減した印象でした。引き続きスギ花粉症に対する舌下免疫療法や重症アレルギー性鼻炎患者へは抗IgE抗体製剤(オマリズマブ)も使用検討していきますので、近隣の先生方には適応患者さんがいましたらご紹介お願い申し上げます。
鼻科手術については、10月に県・病院の要請で悪性・緊急手術以外の手術が中止になりましたが、幸い数週間のみの制限だったことから、手術件数は昨年度の大幅減少から回復しています。主要スタッフが1人減りましたが、五島先生を中心に従来どおりの手術件数、医療レベルを維持できるように慢心してまいります。
また、日本鼻科学会の日本鼻科学会認定手術指導医の申請資格を得るため、2022年4月からは東京医科大学茨木医療センターの大塚康司教授(日本鼻科学会認定手術暫定指導医)に非常勤医師として来ていただくことになりました。
鼻科手術治療は、ほぼ全ての症例を内視鏡下に行っています。症例の重症度や罹患洞数により、局所麻酔下の日帰り手術(DCR)や鼻中隔経由・拡大蝶形骨洞手術、EMMM(endoscopic modified medial maxillectomy)、DALMA法(direct approach to the anterior and lateral part of the maxillary sinus with an endoscope)、なども取り入れて治療を行っています。さらに今年度は、前頭洞嚢胞や前頭洞腫瘍に対するEMLP(Endoscopic modified Lothrop procedure)や鼻腔を占拠する腫瘍に対するTACMI法(Transseptal Access with Crossing Multiple Incisions)、外鼻変形や前弯を合併した鼻中隔弯曲症に対しては、形成外科と合同でOpen Septorhinoplastyも積極的に導入しています。難治性の好酸球性副鼻腔炎例の中等・重症例に対しては、難病申請のうえ、抗IL4/13受容体抗体製剤(デュピルマブ)治療を行っています。現在、12例ほどの患者に使用中ですが、全ての患者において、嗅覚を中心とした自覚症状の改善や画像所見の改善、鼻茸の縮小効果を認めています。好酸球性中耳炎合併患者の中耳炎においては、一進一退の症例もございますが、ほぼ全ての症例でステロイド経口投与の中止または減量ができています。今後も副鼻腔炎に対する新たな生物学的製剤の適応が増加してくると思われ、当科でも積極的に取り入れていく次第です。
鼻腔通気に関連する基礎研究や副鼻腔炎患者における臨床研究も継続し、幹細胞を用いた嗅覚再生治療も検討しています。臨床と研究の両分野でさらなる発展を目指していきます。来年度もどうぞよろしくお願いいたします。
A. 鼻班の集合写真(左から金田、五島、山崎、斎藤)。
B. 形成外科との合同手術(Open Septorhinoplasty)。形成外科で助軟骨採取の間に患者左側よりESSを行っている。通常の患者右側の立ち位置ではないが、器用にこなす山崎先生。
C. クリニカル・クラークシップで耳鼻科実習中の5年生達。アンケートでも手術実習は大変人気です(2021年12月)。
D. 東京医科大学茨木医療センター教授・大塚康司先生を非常勤医師としてお迎えし、医局にて大塚先生を囲んで。
主な手術件数(2021年1月~2021年12月)
主な手術件数(2021年1月~2021年12月)
※10月は手術中止期間
2021 | 2020 | 2019 | |
鼻科手術合計 | 235 | 206 | 290 |
全身麻酔(人) | 107 | 85 | 143 |
局所麻酔(人) | 21 | 19 | 27 |
全内視鏡手術 | 231 | 205 | 288 |
慢性副鼻腔炎(側) | 79 | 94 | 131 |
炎症(片側) | 9 | 5 | 10 |
歯性 | 22 | 20 | 19 |
真菌 | 9 | 8 | 18 |
AFRS | 0 | 1 | 1 |
異物 | 1 | 0 | 1 |
nonECRS(両側) | 9 | 19 | 29 |
ECRS(両側) | 8 | 8 | 11 |
AFRS(両側) | 2 | 0 | 0 |
その他 | 0 | 6 | 2 |
嚢胞 | 8 | 5 | 18 |
POMC | 4 | 2 | 14 |
その他嚢胞 | 4 | 3 | 4 |
腫瘍 | 16 | 12 | 13 |
乳頭腫 | 8 | 7 | 8 |
血管腫 | 3 | 2 | 1 |
SCC | 1 | 1 | 0 |
嗅神経芽細胞腫 | 0 | 1 | 0 |
その他 | 4 | 3 | 7 |
2021年度詳細:グロームス腫瘍、多形腺腫、神経鞘腫、横紋筋肉腫 | |||
鼻中隔矯正術 | 41 | 30 | 59 |
下鼻甲介手術 | 72 | 56 | 44 |
オスラー病焼灼術 | 1 | 1 | 1 |
CO2レーザー | 3 | 5 | 11 |
その他(生検、止血 etc) | 12 | 0 | 8 |
鼻外切開手術 | |||
形成外科合同 Open Septorhinoplasty |
2 | 0 | 0 |
冠状切開+鼻外前頭洞手術 | 1 | 3 | 1 |
鼻前庭嚢胞摘出術 | 1 | 0 | 1 |
ESS型の詳細
ESS型の詳細
2021 | 2020 | 2019 | |
Ⅰ型(polypotomy) | 1 | 2 | 7 |
Ⅱ(単洞) | 32 | 35 | 43 |
Ⅲ(複数洞) | 42 | 55 | 76 |
Ⅳ(汎副鼻腔) | 25 | 6 | 17 |
Ⅴ(拡大) 両前頭洞単洞化 頭蓋底手術・眼窩手術 |
3 EMLP (Inside-out2) EMLP (Outside-in1) |
0 | 2 |
EMMM | 1 | 省く | 省く |
DALMA | 0 | 2 | 0 |
TACMI | 1 | 0 | 0 |
鼻中隔経由拡大蝶形骨洞手術 | 5 | 省く | 省く |
緊急手術症例
●特発性鼻出血・反復性鼻出血×5例
●緊急局麻生検×2例(SCC、横紋筋肉腫)
●71歳男性 重度頭痛と骨欠損を伴った蝶形骨洞炎に対する局麻・蝶形骨洞開放
●74歳女性 急性副鼻腔炎、鼻性眼窩骨膜下膿瘍、外転神経麻痺に対する全麻・ESSⅢ型
学術活動
一般演題
斎藤弘亮
「非外傷性海綿静脈洞部内頸動脈瘤の同定にMRIVRFA-3D-TSE法が有用であった反復性鼻出血例(oral)」
第83回耳鼻咽喉科臨床学会総会・学術講演会(2021年6月/Web開催)
「非外傷性海綿静脈洞部内頸動脈瘤の同定にMRIVRFA-3D-TSE法が有用であった反復性鼻出血例(oral)」
第83回耳鼻咽喉科臨床学会総会・学術講演会(2021年6月/Web開催)
金田将治
「鼻副鼻腔モデルを用いた鼻腔通気数値シミュレーション(poster)」
第60回日本鼻科学会総会・学術講演会(2021年9月/ハイブリット開催)
「鼻副鼻腔モデルを用いた鼻腔通気数値シミュレーション(poster)」
第60回日本鼻科学会総会・学術講演会(2021年9月/ハイブリット開催)
斎藤弘亮
「Dupilumab 投与開始後に精神症状が変化した精神疾患合併・好酸球性副鼻腔炎の1例(oral)」
第60回日本鼻科学会総会・学術講演会(2021年9月/ハイブリット開催)
「Dupilumab 投与開始後に精神症状が変化した精神疾患合併・好酸球性副鼻腔炎の1例(oral)」
第60回日本鼻科学会総会・学術講演会(2021年9月/ハイブリット開催)
依頼講演
斎藤弘亮
「アレルギー性鼻炎の治療経験と耳鼻咽喉科異物診療」
Shonan Allergy Conference 2021(2021年1月/大鵬薬品工業株式会社主催)
「アレルギー性鼻炎の治療経験と耳鼻咽喉科異物診療」
Shonan Allergy Conference 2021(2021年1月/大鵬薬品工業株式会社主催)
斎藤弘亮
「当科での鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎に対するデュピクセントの効果と安全性」
2021 Type2 inflammation summit(2021年8月/サノフィ株式会社主催)
「当科での鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎に対するデュピクセントの効果と安全性」
2021 Type2 inflammation summit(2021年8月/サノフィ株式会社主催)
斎藤弘亮
「当科におけるデュピルマブ投与の治療効果」
2021 Because of Type2 Meeting in KANTO – KOSHIN(2021年10月/サノフィ株式会社主催)
「当科におけるデュピルマブ投与の治療効果」
2021 Because of Type2 Meeting in KANTO – KOSHIN(2021年10月/サノフィ株式会社主催)
金田将治
「アレルギー性鼻炎の診断と治療 -東海大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科アンケート結果を踏まえて-」
大鵬薬品工業株式会社・社内研修会(2021年10月)
「アレルギー性鼻炎の診断と治療 -東海大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科アンケート結果を踏まえて-」
大鵬薬品工業株式会社・社内研修会(2021年10月)
斎藤弘亮
「耳鼻咽喉科ってどんな?」
大鵬薬品工業株式会社・社内研修会(2021年12月)
「耳鼻咽喉科ってどんな?」
大鵬薬品工業株式会社・社内研修会(2021年12月)
業績
和文
金田将治
「外転神経麻痺を発症し糖尿病性眼筋麻痺と鑑別不能であった副鼻腔炎例」
耳鼻咽喉科臨床学会会誌115:5:413~418, 2022(令和4年)
「外転神経麻痺を発症し糖尿病性眼筋麻痺と鑑別不能であった副鼻腔炎例」
耳鼻咽喉科臨床学会会誌115:5:413~418, 2022(令和4年)
投稿中
Kosuke Saito, MD, PhD; Fumiyuki Goto, MD, PhD; Hikaru Yamamoto, MD; Shoji Kaneda, MD, PhD; Akihiro Sakai, MD, PhD; Koji Ebisumoto, MD, PhD; Daisuke Maki, MD, Takanobu Teramura, MD; Hiroaki Iijima, MD; Aritomo Yamazaki, MD; and Kenji Okami, MD, PhD
malignant lymphoma of the maxillary sinus with MRI findings resembling inflammatory disease : a case report.
Case Reports in Otolaryngology
malignant lymphoma of the maxillary sinus with MRI findings resembling inflammatory disease : a case report.
Case Reports in Otolaryngology
斎藤弘亮, 五島史行, 山本光, 金田将治, 大上研二「Dupilumab投与開始後に精神症状が変化した精神疾患合併・好酸球性副鼻腔炎例」
日本鼻科学会会誌(第60回日本鼻科学会総会・学術講演会 座長推薦)
→取り下げ
日本鼻科学会会誌(第60回日本鼻科学会総会・学術講演会 座長推薦)
→取り下げ
臨床研究
1. 難治性好酸球性気道疾患の臨床的病態学的検討(呼吸器内科との共同研究)
①血液、②鼻茸・ムチン、③喀痰・気管支肺洗浄液を用いた好酸球関連バイオマーカーの検討, 真菌学的検討(遺伝子解析), 新規治療の開発
①血液、②鼻茸・ムチン、③喀痰・気管支肺洗浄液を用いた好酸球関連バイオマーカーの検討, 真菌学的検討(遺伝子解析), 新規治療の開発
2. 慢性副鼻腔炎患者の内視鏡下副鼻腔炎手術におけるQOLに関する研究
①SNOT-22質問票を用いた術前後の症状スコア評価、②副鼻通気度計を用いた副鼻通気度の術前後評価、③Lund-Mackayスコア用いた副鼻腔CTの術前後評価
①SNOT-22質問票を用いた術前後の症状スコア評価、②副鼻通気度計を用いた副鼻通気度の術前後評価、③Lund-Mackayスコア用いた副鼻腔CTの術前後評価
3. 鼻副鼻腔モデルを用いた鼻腔通気数値シミュレーション(東海大学工学部との共同研究)
CT画像から構築した鼻副鼻腔3D画像を用いた数値計算による鼻腔内気流と鼻腔抵抗値の評価。コンピューターシミュレーションを用いて、新しく簡便な評価方法を確立し、鼻副鼻腔手術への応用を目指す。
CT画像から構築した鼻副鼻腔3D画像を用いた数値計算による鼻腔内気流と鼻腔抵抗値の評価。コンピューターシミュレーションを用いて、新しく簡便な評価方法を確立し、鼻副鼻腔手術への応用を目指す。
4. 骨格筋内幹細胞群由来サイトカインカクテルによる嗅覚再生治療(生体構造機能学・玉木ユニットとの共同研究)
骨格筋由来幹細胞サイトカインカクテルを応用した点鼻薬を生成し、嗅覚障害モデルマウスに投与し、その嗅神経細胞の再生効果を評価する。即ち、細胞移植を必要としない「サイトカインカクテルによる嗅神経再生治療の開発」を目指し臨床応用への可能性を追求する。
骨格筋由来幹細胞サイトカインカクテルを応用した点鼻薬を生成し、嗅覚障害モデルマウスに投与し、その嗅神経細胞の再生効果を評価する。即ち、細胞移植を必要としない「サイトカインカクテルによる嗅神経再生治療の開発」を目指し臨床応用への可能性を追求する。
研究費
金田将治
科学研究助成基金助成金
数値シミュレーションを用いた鼻副鼻腔通気に関する新規検査法の開拓
若手研究 課題番号:20KI8324
2020~2023年度 3,380,000円
科学研究助成基金助成金
数値シミュレーションを用いた鼻副鼻腔通気に関する新規検査法の開拓
若手研究 課題番号:20KI8324
2020~2023年度 3,380,000円
斎藤弘亮
科学研究助成基金助成金
骨格筋内幹細胞群由来サイトカインカクテルによる嗅覚再生治療
若手研究 課題番号:22KI6920
2022~2024年年度 4,550,000円
科学研究助成基金助成金
骨格筋内幹細胞群由来サイトカインカクテルによる嗅覚再生治療
若手研究 課題番号:22KI6920
2022~2024年年度 4,550,000円
鼻班紹介
文責:斎藤弘亮
鼻班は、昨年度鼻班の主軸であった関根基樹先生が退職されました。現在、五島史行(平成6年・慶応大学卒)、金田将治(平成20年・福井大学卒)、斎藤弘亮(平成20年・藤田医科大学卒)、山崎有朋(平成29年・東海大学卒)と計4名で診療しています。
今年度は、アレルギー性鼻炎、特に花粉症に関しては、新型コロナウイルス感染拡大の影響による外出自粛やマスクの常用などから患者さんが激減した印象でした。引き続きスギ花粉症に対する舌下免疫療法や重症アレルギー性鼻炎患者へは抗IgE抗体製剤(オマリズマブ)も使用検討していきますので、近隣の先生方には適応患者さんがいましたらご紹介お願い申し上げます。
鼻科手術については、10月に県・病院の要請で悪性・緊急手術以外の手術が中止になりましたが、幸い数週間のみの制限だったことから、手術件数は昨年度の大幅減少から回復しています。主要スタッフが1人減りましたが、五島先生を中心に従来どおりの手術件数、医療レベルを維持できるように慢心してまいります。
また、日本鼻科学会の日本鼻科学会認定手術指導医の申請資格を得るため、2022年4月からは東京医科大学茨木医療センターの大塚康司教授(日本鼻科学会認定手術暫定指導医)に非常勤医師として来ていただくことになりました。
鼻科手術治療は、ほぼ全ての症例を内視鏡下に行っています。症例の重症度や罹患洞数により、局所麻酔下の日帰り手術(DCR)や鼻中隔経由・拡大蝶形骨洞手術、EMMM(endoscopic modified medial maxillectomy)、DALMA法(direct approach to the anterior and lateral part of the maxillary sinus with an endoscope)、なども取り入れて治療を行っています。さらに今年度は、前頭洞嚢胞や前頭洞腫瘍に対するEMLP(Endoscopic modified Lothrop procedure)や鼻腔を占拠する腫瘍に対するTACMI法(Transseptal Access with Crossing Multiple Incisions)、外鼻変形や前弯を合併した鼻中隔弯曲症に対しては、形成外科と合同でOpen Septorhinoplastyも積極的に導入しています。難治性の好酸球性副鼻腔炎例の中等・重症例に対しては、難病申請のうえ、抗IL4/13受容体抗体製剤(デュピルマブ)治療を行っています。現在、12例ほどの患者に使用中ですが、全ての患者において、嗅覚を中心とした自覚症状の改善や画像所見の改善、鼻茸の縮小効果を認めています。好酸球性中耳炎合併患者の中耳炎においては、一進一退の症例もございますが、ほぼ全ての症例でステロイド経口投与の中止または減量ができています。今後も副鼻腔炎に対する新たな生物学的製剤の適応が増加してくると思われ、当科でも積極的に取り入れていく次第です。
鼻腔通気に関連する基礎研究や副鼻腔炎患者における臨床研究も継続し、幹細胞を用いた嗅覚再生治療も検討しています。臨床と研究の両分野でさらなる発展を目指していきます。来年度もどうぞよろしくお願いいたします。
今年度は、アレルギー性鼻炎、特に花粉症に関しては、新型コロナウイルス感染拡大の影響による外出自粛やマスクの常用などから患者さんが激減した印象でした。引き続きスギ花粉症に対する舌下免疫療法や重症アレルギー性鼻炎患者へは抗IgE抗体製剤(オマリズマブ)も使用検討していきますので、近隣の先生方には適応患者さんがいましたらご紹介お願い申し上げます。
鼻科手術については、10月に県・病院の要請で悪性・緊急手術以外の手術が中止になりましたが、幸い数週間のみの制限だったことから、手術件数は昨年度の大幅減少から回復しています。主要スタッフが1人減りましたが、五島先生を中心に従来どおりの手術件数、医療レベルを維持できるように慢心してまいります。
また、日本鼻科学会の日本鼻科学会認定手術指導医の申請資格を得るため、2022年4月からは東京医科大学茨木医療センターの大塚康司教授(日本鼻科学会認定手術暫定指導医)に非常勤医師として来ていただくことになりました。
鼻科手術治療は、ほぼ全ての症例を内視鏡下に行っています。症例の重症度や罹患洞数により、局所麻酔下の日帰り手術(DCR)や鼻中隔経由・拡大蝶形骨洞手術、EMMM(endoscopic modified medial maxillectomy)、DALMA法(direct approach to the anterior and lateral part of the maxillary sinus with an endoscope)、なども取り入れて治療を行っています。さらに今年度は、前頭洞嚢胞や前頭洞腫瘍に対するEMLP(Endoscopic modified Lothrop procedure)や鼻腔を占拠する腫瘍に対するTACMI法(Transseptal Access with Crossing Multiple Incisions)、外鼻変形や前弯を合併した鼻中隔弯曲症に対しては、形成外科と合同でOpen Septorhinoplastyも積極的に導入しています。難治性の好酸球性副鼻腔炎例の中等・重症例に対しては、難病申請のうえ、抗IL4/13受容体抗体製剤(デュピルマブ)治療を行っています。現在、12例ほどの患者に使用中ですが、全ての患者において、嗅覚を中心とした自覚症状の改善や画像所見の改善、鼻茸の縮小効果を認めています。好酸球性中耳炎合併患者の中耳炎においては、一進一退の症例もございますが、ほぼ全ての症例でステロイド経口投与の中止または減量ができています。今後も副鼻腔炎に対する新たな生物学的製剤の適応が増加してくると思われ、当科でも積極的に取り入れていく次第です。
鼻腔通気に関連する基礎研究や副鼻腔炎患者における臨床研究も継続し、幹細胞を用いた嗅覚再生治療も検討しています。臨床と研究の両分野でさらなる発展を目指していきます。来年度もどうぞよろしくお願いいたします。
A. 鼻班の集合写真(左から金田、五島、山崎、斎藤)。
B. 形成外科との合同手術(Open Septorhinoplasty)。形成外科で助軟骨採取の間に患者左側よりESSを行っている。通常の患者右側の立ち位置ではないが、器用にこなす山崎先生。
C. クリニカル・クラークシップで耳鼻科実習中の5年生達。アンケートでも手術実習は大変人気です(2021年12月)。
D. 東京医科大学茨木医療センター教授・大塚康司先生を非常勤医師としてお迎えし、医局にて大塚先生を囲んで。
主な手術件数(2021年1月~2021年12月)
主な手術件数(2021年1月~2021年12月)
※10月は手術中止期間
2021 | 2020 | 2019 | |
鼻科手術合計 | 235 | 206 | 290 |
全身麻酔(人) | 107 | 85 | 143 |
局所麻酔(人) | 21 | 19 | 27 |
全内視鏡手術 | 231 | 205 | 288 |
慢性副鼻腔炎(側) | 79 | 94 | 131 |
炎症(片側) | 9 | 5 | 10 |
歯性 | 22 | 20 | 19 |
真菌 | 9 | 8 | 18 |
AFRS | 0 | 1 | 1 |
異物 | 1 | 0 | 1 |
nonECRS(両側) | 9 | 19 | 29 |
ECRS(両側) | 8 | 8 | 11 |
AFRS(両側) | 2 | 0 | 0 |
その他 | 0 | 6 | 2 |
嚢胞 | 8 | 5 | 18 |
POMC | 4 | 2 | 14 |
その他嚢胞 | 4 | 3 | 4 |
腫瘍 | 16 | 12 | 13 |
乳頭腫 | 8 | 7 | 8 |
血管腫 | 3 | 2 | 1 |
SCC | 1 | 1 | 0 |
嗅神経芽細胞腫 | 0 | 1 | 0 |
その他 | 4 | 3 | 7 |
2021年度詳細:グロームス腫瘍、多形腺腫、神経鞘腫、横紋筋肉腫 | |||
鼻中隔矯正術 | 41 | 30 | 59 |
下鼻甲介手術 | 72 | 56 | 44 |
オスラー病焼灼術 | 1 | 1 | 1 |
CO2レーザー | 3 | 5 | 11 |
その他(生検、止血 etc) | 12 | 0 | 8 |
鼻外切開手術 | |||
形成外科合同 Open Septorhinoplasty |
2 | 0 | 0 |
冠状切開+鼻外前頭洞手術 | 1 | 3 | 1 |
鼻前庭嚢胞摘出術 | 1 | 0 | 1 |
ESS型の詳細
ESS型の詳細
2021 | 2020 | 2019 | |
Ⅰ型(polypotomy) | 1 | 2 | 7 |
Ⅱ(単洞) | 32 | 35 | 43 |
Ⅲ(複数洞) | 42 | 55 | 76 |
Ⅳ(汎副鼻腔) | 25 | 6 | 17 |
Ⅴ(拡大) 両前頭洞単洞化 頭蓋底手術・眼窩手術 |
3 EMLP (Inside-out2) EMLP (Outside-in1) |
0 | 2 |
EMMM | 1 | 省く | 省く |
DALMA | 0 | 2 | 0 |
TACMI | 1 | 0 | 0 |
鼻中隔経由拡大蝶形骨洞手術 | 5 | 省く | 省く |
緊急手術症例
●特発性鼻出血・反復性鼻出血×5例
●緊急局麻生検×2例(SCC、横紋筋肉腫)
●71歳男性 重度頭痛と骨欠損を伴った蝶形骨洞炎に対する局麻・蝶形骨洞開放
●74歳女性 急性副鼻腔炎、鼻性眼窩骨膜下膿瘍、外転神経麻痺に対する全麻・ESSⅢ型
学術活動
一般演題
斎藤弘亮
「非外傷性海綿静脈洞部内頸動脈瘤の同定にMRIVRFA-3D-TSE法が有用であった反復性鼻出血例(oral)」
第83回耳鼻咽喉科臨床学会総会・学術講演会(2021年6月/Web開催)
「非外傷性海綿静脈洞部内頸動脈瘤の同定にMRIVRFA-3D-TSE法が有用であった反復性鼻出血例(oral)」
第83回耳鼻咽喉科臨床学会総会・学術講演会(2021年6月/Web開催)
金田将治
「鼻副鼻腔モデルを用いた鼻腔通気数値シミュレーション(poster)」
第60回日本鼻科学会総会・学術講演会(2021年9月/ハイブリット開催)
「鼻副鼻腔モデルを用いた鼻腔通気数値シミュレーション(poster)」
第60回日本鼻科学会総会・学術講演会(2021年9月/ハイブリット開催)
斎藤弘亮
「Dupilumab 投与開始後に精神症状が変化した精神疾患合併・好酸球性副鼻腔炎の1例(oral)」
第60回日本鼻科学会総会・学術講演会(2021年9月/ハイブリット開催)
「Dupilumab 投与開始後に精神症状が変化した精神疾患合併・好酸球性副鼻腔炎の1例(oral)」
第60回日本鼻科学会総会・学術講演会(2021年9月/ハイブリット開催)
依頼講演
斎藤弘亮
「アレルギー性鼻炎の治療経験と耳鼻咽喉科異物診療」
Shonan Allergy Conference 2021(2021年1月/大鵬薬品工業株式会社主催)
「アレルギー性鼻炎の治療経験と耳鼻咽喉科異物診療」
Shonan Allergy Conference 2021(2021年1月/大鵬薬品工業株式会社主催)
斎藤弘亮
「当科での鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎に対するデュピクセントの効果と安全性」
2021 Type2 inflammation summit(2021年8月/サノフィ株式会社主催)
「当科での鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎に対するデュピクセントの効果と安全性」
2021 Type2 inflammation summit(2021年8月/サノフィ株式会社主催)
斎藤弘亮
「当科におけるデュピルマブ投与の治療効果」
2021 Because of Type2 Meeting in KANTO – KOSHIN(2021年10月/サノフィ株式会社主催)
「当科におけるデュピルマブ投与の治療効果」
2021 Because of Type2 Meeting in KANTO – KOSHIN(2021年10月/サノフィ株式会社主催)
金田将治
「アレルギー性鼻炎の診断と治療 -東海大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科アンケート結果を踏まえて-」
大鵬薬品工業株式会社・社内研修会(2021年10月)
「アレルギー性鼻炎の診断と治療 -東海大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科アンケート結果を踏まえて-」
大鵬薬品工業株式会社・社内研修会(2021年10月)
斎藤弘亮
「耳鼻咽喉科ってどんな?」
大鵬薬品工業株式会社・社内研修会(2021年12月)
「耳鼻咽喉科ってどんな?」
大鵬薬品工業株式会社・社内研修会(2021年12月)
業績
和文
金田将治
「外転神経麻痺を発症し糖尿病性眼筋麻痺と鑑別不能であった副鼻腔炎例」
耳鼻咽喉科臨床学会会誌115:5:413~418, 2022(令和4年)
「外転神経麻痺を発症し糖尿病性眼筋麻痺と鑑別不能であった副鼻腔炎例」
耳鼻咽喉科臨床学会会誌115:5:413~418, 2022(令和4年)
投稿中
Kosuke Saito, MD, PhD; Fumiyuki Goto, MD, PhD; Hikaru Yamamoto, MD; Shoji Kaneda, MD, PhD; Akihiro Sakai, MD, PhD; Koji Ebisumoto, MD, PhD; Daisuke Maki, MD, Takanobu Teramura, MD; Hiroaki Iijima, MD; Aritomo Yamazaki, MD; and Kenji Okami, MD, PhD
malignant lymphoma of the maxillary sinus with MRI findings resembling inflammatory disease : a case report.
Case Reports in Otolaryngology
malignant lymphoma of the maxillary sinus with MRI findings resembling inflammatory disease : a case report.
Case Reports in Otolaryngology
斎藤弘亮, 五島史行, 山本光, 金田将治, 大上研二「Dupilumab投与開始後に精神症状が変化した精神疾患合併・好酸球性副鼻腔炎例」
日本鼻科学会会誌(第60回日本鼻科学会総会・学術講演会 座長推薦)
→取り下げ
日本鼻科学会会誌(第60回日本鼻科学会総会・学術講演会 座長推薦)
→取り下げ
臨床研究
1. 難治性好酸球性気道疾患の臨床的病態学的検討(呼吸器内科との共同研究)
①血液、②鼻茸・ムチン、③喀痰・気管支肺洗浄液を用いた好酸球関連バイオマーカーの検討, 真菌学的検討(遺伝子解析), 新規治療の開発
①血液、②鼻茸・ムチン、③喀痰・気管支肺洗浄液を用いた好酸球関連バイオマーカーの検討, 真菌学的検討(遺伝子解析), 新規治療の開発
2. 慢性副鼻腔炎患者の内視鏡下副鼻腔炎手術におけるQOLに関する研究
①SNOT-22質問票を用いた術前後の症状スコア評価、②副鼻通気度計を用いた副鼻通気度の術前後評価、③Lund-Mackayスコア用いた副鼻腔CTの術前後評価
①SNOT-22質問票を用いた術前後の症状スコア評価、②副鼻通気度計を用いた副鼻通気度の術前後評価、③Lund-Mackayスコア用いた副鼻腔CTの術前後評価
3. 鼻副鼻腔モデルを用いた鼻腔通気数値シミュレーション(東海大学工学部との共同研究)
CT画像から構築した鼻副鼻腔3D画像を用いた数値計算による鼻腔内気流と鼻腔抵抗値の評価。コンピューターシミュレーションを用いて、新しく簡便な評価方法を確立し、鼻副鼻腔手術への応用を目指す。
CT画像から構築した鼻副鼻腔3D画像を用いた数値計算による鼻腔内気流と鼻腔抵抗値の評価。コンピューターシミュレーションを用いて、新しく簡便な評価方法を確立し、鼻副鼻腔手術への応用を目指す。
4. 骨格筋内幹細胞群由来サイトカインカクテルによる嗅覚再生治療(生体構造機能学・玉木ユニットとの共同研究)
骨格筋由来幹細胞サイトカインカクテルを応用した点鼻薬を生成し、嗅覚障害モデルマウスに投与し、その嗅神経細胞の再生効果を評価する。即ち、細胞移植を必要としない「サイトカインカクテルによる嗅神経再生治療の開発」を目指し臨床応用への可能性を追求する。
骨格筋由来幹細胞サイトカインカクテルを応用した点鼻薬を生成し、嗅覚障害モデルマウスに投与し、その嗅神経細胞の再生効果を評価する。即ち、細胞移植を必要としない「サイトカインカクテルによる嗅神経再生治療の開発」を目指し臨床応用への可能性を追求する。
研究費
金田将治
科学研究助成基金助成金
数値シミュレーションを用いた鼻副鼻腔通気に関する新規検査法の開拓
若手研究 課題番号:20KI8324
2020~2023年度 3,380,000円
科学研究助成基金助成金
数値シミュレーションを用いた鼻副鼻腔通気に関する新規検査法の開拓
若手研究 課題番号:20KI8324
2020~2023年度 3,380,000円
斎藤弘亮
科学研究助成基金助成金
骨格筋内幹細胞群由来サイトカインカクテルによる嗅覚再生治療
若手研究 課題番号:22KI6920
2022~2024年年度 4,550,000円
科学研究助成基金助成金
骨格筋内幹細胞群由来サイトカインカクテルによる嗅覚再生治療
若手研究 課題番号:22KI6920
2022~2024年年度 4,550,000円